2.アバクロ
日本で現在大人気のファッションブランドの1つに、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie&Fitch)通称アバクロというカジュアルファッションブランドがあります。非常に人気の高いカジュアルファッションのブランドで、日本では2009年12月15日に銀座6丁目に直営店をオープンさせたのですが、それ以前からインターネットショップや通信販売を通して多くのアバクロの商品が日本で流通しており、直営店のオープン以前にもかかわらず偽者が多数販売されていたほどです。
アバクロとは、もともと1892年に創業されたキャンプや狩猟といったアウトドア関連用品を販売している、主な顧客には男性が中心となっているショップでした。世界的に有名な冒険好きな作家、アーネスト・ヘミングウェイも愛用しているほど歴史が古く、しかも品質の高さに信頼があるショップです。しかし、1988年に現在のリミテッド・ブランズ社に買収され、さらに1992年にマイケル・ジェフリーズがCEOとなってからは、店の方向性が180度変わり、現在のファッションとしての地位を高めているアバクロとなりました。現在のアバクロとは、カジュアルで健康的なセクシーさ、体にフィットするデザインというヴィンテージ風カジュアルファッションブランドという意味です。そしてブラッド・ピットをはじめとするハリウッドの有名スターやベッカム夫妻、日本では木村拓哉さんなど、ファッションリーダーとして有名な俳優さんが愛用し、大きな注目を集めていました。アバクロの魅力といえば、独特のヴィンテージ加工、ダメージ加工によって、洗いざらしたような生地感とデストロイ加工などの高い技術、多彩な色やプリントです。言ってみれば、アメリカンカジュアル中でも、選べるこなれた古着感というおしゃれな感じが、アバクロのファッションの大きな魅力となっています。そしてアバクロのもう1つの特徴というと、アバクロの店舗です。店舗全体に香水が漂っており、しかもモデルさんがシャツの胸をはだけさせて店内を踊ったりおしゃべりしていたりするという独特の店舗で、いったん足を運んだお客様は、何度も訪れたくなってしまうほど、商品だけでなく店舗にも魅了されてしまいます。
そんな大人気のアバクロは、2009年までは、商品の価格の値引きというのは一切行なわない方針を貫いてきていました。しかしアメリカ国内での売り上げを懸念し、2009年12月に異例の大幅値下げを行ないました。その結果は、売り上げの減少という予想外の結果となってしまい、戦略の練り直しが求められることが明白になってしまっています。ただし、アメリカ以外では売り上げは好調に伸ばしていますので、国内での戦略見直しということになるでしょう。また、高級感のあるカジュアルファッションというものに抵抗を感じるというユーザーも出始めてきています。スーツが低価格化していくのと反比例するかのように、カジュアルファッションが高級化していくという現象を違和感を持っているというユーザーです。 エヴィス・HOUSTONヒューストン・dieselなど、日本で人気のブランドと並んでアバクロは大人気で、好きな人にも支持が高いそうです。そのような人に人気の理由としては、エヴィス・HOUSTONヒューストン・dieselとアバクロの相性がよく、コーディネートに取り入れやすいという点だと思います。
そういった背景もあってか、カジュアルなファッションが主体のアバクロですが、アバクロスーツというのも期待されているようになっている傾向があるようです。実際、アバクロはカジュアルなファッションが中心で、革のお財布はもちろん、革の靴やベルトも発表していません。ただしベルトも、カジュアルなベルトならたくさんありますし、靴もサンダルなら素敵なデザインのものが多くあります。そのため、アバクロスーツというと少し違和感を覚える方も大勢いらっしゃるかもしれません。アバクロスーツといわれると、アバクロらしくないというか、アバクロのよさがなくなってしまうのではないかという感じを受けるためです。カジュアルなスーツというのもありえませんから、アバクロスーツには違和感があるということでしょう。ただ、そこであえてアバクロがアバクロらしさを持ったまま、アバクロスーツを発表したら、ファッション界の大きな注目の的となることは間違いないと思われます。今後、アバクロがアバクロスーツに関してどのような動きをとっていくのか、注目してみると面白いかもしれません。